新卒年収1000万円! 採用戦略は当たるのか?
新卒年収1000万円! 採用戦略は当たるのか?
ソニーが新卒に730万円出しますよといい出したあたりから、新卒採用初任給大喜利が始まっています。
2019.6.20 ITmedia
ソニーが新卒に最大で初任給730万円を支払う。高度人材を確保するためだが、中高年社員の反発など背景には日本企業の本質的な課題が。
2019.6.05 ITmedia
幹部候補生を年収1000万円で募集します――くら寿司が公開した「エグゼクティブ新卒採用」の募集条件が話題になっている。この取り組みで同社は、2020年春入社の新卒採用において、26歳以下でTOEIC800以上、簿記3級以上を持つ人材を10人ほど採用する計画という。
2019.7.09 NHK news web
AI=人工知能などの先端分野で、海外のIT企業も含めて人材の獲得競争が激しくなっていることから、NECは研究職の社員は新卒であっても、場合によって年収が1000万円を超える新たな制度の導入を決めました。
勢いが止まりませんが、この採用戦略は当たるのでしょうか?
大企業で事業戦略をやっていて、過去に3回転職している視点から考えてみます。
新卒年収1000万円は広告戦略としては当たり!
私もこうしてまんまと記事にするくらい、日本企業における年収1000万円というのはインパクトがあり話題性抜群です。
多くの大企業においても年収1000万円というのは10年以上勤めて管理職に昇進してようやく手にできる1つの大きなターニングポイントです。
それをまだ社会人として実績のない人にどーんと提供というのですから、それはニュースになります。
これは早い者勝ちみたいなところがあって、これから先は新卒年収1000万円以下ですと、あまりニュースになりにくいですね。
どこか別の業界なら可能性ありますが、製造メーカーと外食はもう出たので、ニュースにしたければ1200万円! 1500万円! とハンマープライス形式でやるしかありません。
全国ニュースに取り上げてもらえれば1000万円分くらいの広告効果は回収できたという考え方もあるでしょう。
人数とか年収以外のなんやかんやは別として話題性という意味で、くら寿司やNECはスピード感のあるチャレンジをしたということです。
年収1000万円に見合う採用が出来るのか?
採用戦略でいうと、くら寿司やNECの狙い通りの採用が出来るのかはまだ分かりません。
私はソニーの採用を受けたことがありますが、明らかに他社とは違う、採用への力の入れ方を感じました。
ソニーの面接官は仕事も熟知していて、人を見るスキルも他とはレベルが違ったことを鮮明に覚えています。
質問のレベル、こちらの回答を聞いた上でそのロジックへのツッコミの鋭さ、待遇面などでの余計な駆け引きの無さなど、プロの採用という印象でした。
ですからもともと給与水準の高いソニーにおいて、730万円で新卒採用というのは計算し尽くした戦略的給与設定と感じました。
今の採用を継続していって、その中の上位の人たちを外資系インターネット企業に取られないようにするにはちょうどいい設定でしょう。
周りの新入社員も「自分が600万円で、あいつが730万円というのは十分納得だわ」という採用が出来る目処がたっているはずです。
一方で、くら寿司やNECはどうなんでしょう?
これまで採りたかったけど、逃した人材を獲得するというところまで採用戦略がデザインされていると面白いですが、くら寿司にいたってはおそらく全くこれまで応募してこなかった層の人たちを狙っていますよね。
そこに現在のくら寿司の採用チームが効果的な選抜を出来るのかどうか、また入社後のサポート体制はどんな感じなのかに興味があります。
幹部候補となった学生は年俸制での雇用となり、実績ベースで1年ごとに年収を見直す計画だ。期待に見合った成果を出せなければ、2年目以降は年収が下がる可能性もある。「成果によって年収が下がるのが嫌な人は要らない。ハイリスクだと分かった上で、年収に見合う結果を出す意欲のある人材を求めている」(広報担当者)
実績ベースで年収見直しというのがどれだけ測定可能なものかですよね。
どんなにハイスペでも人間としての限界があるので、到底やりきれないようなことを押し込まれて、実績が出てないので翌年は年収400万円ねとかなると危ういです。
採用後のその先の先までイメージ出来ていないとリスクの高いギャンブルになります。企業にとっても学生にとっても。
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新卒年収1000万円の1番の怖さは先輩社員の妬み
現代は国民総ジャーナリスト時代で、それはそれは他人の不幸が大好物な人で溢れています。
芸能人が不倫したら怒る!
実業家が大成功したら怒る!
YouTuberになりたい子供を怒る!
こんなブログ書いたら怒る 笑!
もうそれはそれは自分が出来なかったことを誰かが出来たら悔しくて悔しくて仕方がないのです。まったく自分の人生に関係ないのにです。
どんな瑣末なことでも命がけで重箱の隅からツッコミどころを探してきて、足を引っ張ろうとしてくるのが昭和マウンティングオジさんです。
この昭和マウンティングオジさんのるつぼが歴史ある大企業なので、NECに年収1000万円で入社する新入社員は「それ込みの1000万円」ということを知っておかないといけません。
「さて、どれだけデキるのかお手並み拝見しましょうか?」
なんていって何も教えずに失敗させてバカにしてくる人がいるかもしれません。
「おい! 1000万円!」
とかクソしょーもないあだ名で呼んでくる人がいるかもしれません。
「オレらが1000万円まで行くのにどれだけの我慢をしたか・・・」
みたいな自慢と説教を毎晩3時間聞かないといけないかもしれません。
ソニーの730万円はその辺が絶妙だなと感じたのですが、NECの1000万円はちょっと微妙な気がしました。
くら寿司にいたっては既存社員との年収レンジとギャップがありすぎで、精神壊されるような間に合わないか心配です。
明確なパワハラがなくても、居心地が悪いと感じる可能性は入る人は知っておかないといけません。
企業は本気で「昭和マウンティングオジさん対策室」という室長32歳くらいの部署作った方がいいです。
新卒年収1000万円の学生さんにエール!
私が新卒なら確実にこの募集には応募します。
採用にかけるコストが違うので、本気の採用に挑めるからです。相手の本気中の本気が見られます。
この1000万円祭の波にキチンと乗って、時代の流れを味方につけて人生の舵取りを自分自身で出来る人が真のハイスペ人材です。
イケてる社員とイケてる会社でソニー、くら寿司、NECがますます面白い会社になっていくのが楽しみです!
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